「不倫していい」と言われたのに慰謝料300万円

「もう夫婦として終わってるんだから、不倫してもいいでしょ」
「好きにすれば?誰と付き合ってもいいよ」

離婚協議中、こうした言葉を配偶者から投げかけられるケースは少なくありません。中には第三者との関係を勧めるような発言もあります。このような状況で実際に不倫(不貞行為)に及んだ場合、法的責任は発生するのでしょうか?

結論から言えば、
「発生しないとは限らない」どころか基本的には責任が認められる可能性が高い、というのが実務的な見解です。

日本の法律では、不貞行為は婚姻関係が継続しているか、夫婦関係が破綻しているかどうかによって判断されます。つまり重要なのは、「配偶者がどう言ったか」ではなく「夫婦関係が実質的に終わっていたか」です。

30代男性・会社員

別居から半年が経過していた頃、妻からこう告げられました。
「もう終わってるんだから、好きにすれば?」
見放されたことで彼はそれを許可だと受け取り、新しい交際相手との関係を始めました。

【結論】

離婚協議中の不倫は、原則「アウト」です。
配偶者から「不倫してもいい」と言われていても、法的に不貞行為の責任が完全に免除されることはほぼありません。

彼はそれを許可だと受け取り、新しい交際相手との関係を始めました。
しかし数ヶ月後、彼の元に届いたのは――

  • 慰謝料請求300万円の通知書
  • 数週間にわたる行動履歴の詳細記録
  • ホテルへの出入りを記録した鮮明な写真
  • 交際相手にも並行して請求
想定外の請求書

「自由にしていいって言ったじゃないか!」
そう叫んでも手遅れでした。なぜこんなことが起きるのか。答えはシンプルです。
法律は「言葉」ではなく「夫婦関係の実態」で判断するからです。

離婚協議中、配偶者からこうした言葉を投げかけられるケースは決して珍しくありません。中には第三者との関係を勧めるような発言(=斡旋)すらあります。
ですが、そうした言葉を真に受けて行動した瞬間、人生は大きく狂い始めるのです。
離婚協議中の不倫は原則「アウト」です。配偶者から「不倫してもいい」と言われていても、法的に不貞行為の責任が完全に免除されることはほぼありません。

なぜなら、日本の法律では、不貞行為の成否は次の2点で判断されます。

判断軸内容
①婚姻関係が継続しているか離婚届が受理されるまで「配偶者あり」の状態
②夫婦関係が実質的に破綻しているか 別居期間・生活実態・修復意思を客観的証拠で判断

つまり最も重要なのは、
「配偶者がどう言ったか」ではなく「夫婦関係が実質的に終わっていたか」という点です。
口頭の「許可」は、ほとんどのケースで法的同意とは認められません。

まずは知っておきたい「慰謝料の相場」

慰謝料の相場

裁判で認められる不貞慰謝料の相場は、おおむね50万〜300万円。夫婦関係への影響度によって金額は大きく変動します。過去の判例350以上を分析した調査では、慰謝料の平均値は約150.4万円。最も多い金額帯は200万円ほどです。

離婚に至らないケースでは、判例上50万〜100万円前後で着地することが多く、不倫相手の収入・資産が高い場合は500万円以上が認定されることもあります。それに加えて、探偵の不倫・浮気調査で掛かった費用などを請求することもできます。

▼ケース別・慰謝料相場の目安

不倫後の夫婦の状況慰謝料相場
離婚せず関係を継続50万〜150万円
別居に至った100万〜200万円
離婚に至った200万〜300万円
妊娠・中絶・精神疾患の発症など特別事情300万円超〜500万円超もあり得る

ケース別で見る「セーフ or アウト」の解説(全6ケース)

夫婦間で問題になりやすい6つのパターンを、状況・行動・判断・理由・回避ポイントまで深掘りします。

①【❌アウト】口頭で「好きにすれば」と言われた

離婚協議中、夫婦喧嘩のさなかに配偶者から「もう自由にすれば?」「好きにしていいよ」と投げかけられた。

これを許可だと解釈して第三者と交際・肉体関係を持った。

【アウト】(不貞成立の可能性が極めて高い)

●判例の傾向
裁判官は「夫婦喧嘩の捨て台詞を、配偶者の真意ある同意と解釈するのは社会通念上困難」と判断する傾向にある。

●回避ポイント
口頭の発言を許可として信用しない。
関係を持つ前に、書面で「不貞容認」の合意書を交わすか離婚成立後まで待つのが鉄則。

●想定される慰謝料
150万〜250万円程度(離婚に至った場合は300万円も)。

ケース①口頭で「好きにすれば」と言われた

②【❌アウト】配偶者から相手を紹介されたケース(斡旋型)

配偶者から「この人と付き合えば?」「いい人がいるよ」と、第三者を直接紹介された。

紹介された相手と実際に肉体関係を持った。

【原則アウト】

●判例の傾向
一見すると配偶者の合意があるように見えますが、婚姻関係が継続している限りは不貞の違法性は消えない。紹介行為そのものが、離婚を有利に進めるための罠として行われるケースもある。紹介後に「やっぱり許せない」と態度を翻されると、慰謝料請求が成立してしまう。

●回避ポイント
紹介された相手とは離婚成立まで関係を持たない。
紹介の経緯・やり取りをLINEや録音で証拠化しておく。

●想定される慰謝料
100万〜200万円程度(紹介の事実が証明できれば一定の減額要素になる)。

ケース②配偶者から相手を紹介されたケース(斡旋型)

③【⭕セーフ寄り】長期間別居+実質的な夫婦関係の破綻

数年(一般的に3〜5年以上)の別居、生活費・家計が完全に分離、子どもを介した最低限の連絡のみ。
修復の見込みがないことが客観的に明らか。

新しいパートナーと交際・肉体関係を持った。

【セーフの可能性あり】

●判例の傾向
婚姻関係が既に破綻している夫婦間においては、配偶者の一方が第三者と性的関係を持っても、原則として不貞行為に基づく不法行為は成立しない」(最高裁判例の趣旨)と判断される場合がある。

●回避ポイント
別居の事実を住民票・賃貸契約書・公共料金で立証可能にしておく
修復不能であることを示すやり取りの記録を保管する。

●想定される慰謝料
0円〜50万円(破綻が立証できれば請求棄却の可能性も)。

▼「破綻」と認められる主な要素

要素重要度
別居期間(3年以上が目安) ⭐⭐⭐⭐⭐
生活費・家計の完全分離 ⭐⭐⭐⭐
修復に向けた対話の有無 ⭐⭐⭐⭐
離婚調停・訴訟の申立て履歴 ⭐⭐⭐
性交渉の途絶 ⭐⭐⭐
ケース③長期間別居+実質的な夫婦関係の破綻

④【❌アウト】別居中だが交流・連絡が続いている

別居はしているが、子どもの行事で月数回は会う。記念日や誕生日に連絡している。夫婦としての家族イベントに同席することがある。

別居生活の中で、新しい相手と不倫関係を持った。

【アウトの可能性が高い】

●判例の傾向
形式上は別居でも、夫婦としての精神的・社会的つながりが残っている。第三者から見て「夫婦関係はまだ続いている」と評価されやすい。「別居していても、家族としての関係性が機能している以上は婚姻関係は破綻していない」と判断されるケースが多い。

●回避ポイント
別居の段階で「形式的別居」ではなく「実質的な別居」へ移行しておく
不必要な接触は控え、修復意思のないことを明確化する。

●想定される慰謝料
100万〜200万円程度。

ケース④別居中だが交流・連絡が続いている

⑤【⚠️グレー】LINEや録音で「許可」が文書として残っている

配偶者が、LINEのテキストメッセージ・録音音声・メールで、「誰と関係を持ってもいい」「不倫してもかまわない」と明確な意思表示を残している。

その記録を許可と判断して、第三者と関係を持った。

【グレー(ケースバイケース)】

●判例の傾向
証拠としては有利ですが、争点になるのは次の3点です。

  1. 真意か否か 一時的感情ではなく、冷静な状態での発言だったか
  2. 撤回されていないか 後日「あれは本心ではない」と翻意していないか
  3. 公序良俗違反 不貞容認の合意は公序良俗に反し無効とする判例も存在

●回避ポイント
単発のメッセージだけでなく、繰り返し確認を取る。
可能であれば公正証書または弁護士同席の合意書として残す。

●想定される慰謝料
30万〜150万円程度(記録の内容次第で大きく変動)。

ケース⑤LINEや録音で「許可」が文書として残っている

⑥【❌アウト】離婚合意前に新しい交際を開始

離婚の話し合いは進んでいる。離婚届はまだ提出していない。
条件交渉(財産分与・親権など)が継続中。

新しい恋人と交際・肉体関係を持った。

【原則アウト】

●判例の傾向
法律上、離婚届が受理されるまでは「配偶者あり」の状態。協議中はあくまで「離婚に向けた話し合い」をしているだけで、婚姻関係は法的に存続している。さらに危険なのは離婚交渉そのものが不利になること。

  1. 親権争いで不利な材料になる
  2. 財産分与で不利な条件を飲まされる
  3. 配偶者からの慰謝料請求の根拠になる

●回避ポイント
離婚届の受理日まで、新しい交際は絶対に控える。
どうしても交際したい場合は、別居+協議離婚成立後まで肉体関係は持たない。

●想定される慰謝料
200万〜300万円程度(離婚に至った場合は満額認定の可能性大)

ケース⑥離婚合意前に新しい交際を開始

実務的に重要な3つのポイント

離婚していない限りは配偶者ありです

この問題で押さえるべき本質は、次の3点に集約されます。
調査の現場でよくあるのが、「許されたと思っていた側」と「裏で証拠を集めている側」という非対称な構図です。

①夫婦関係は本当に破綻していたか

 → 客観的証拠(別居期間・生活実態・離婚調停の記録など)が必須。

② 発言の「法的効力」

 → 感情的発言は無効とされやすい。書面化されていない口頭の「許可」はほぼ意味を持たない。

③ 不倫開始のタイミング

 → 離婚成立前か後かが運命を分ける。1日でも前なら不貞、1日でも後なら自由。

典型的な罠のパターン

◯配偶者A:「自由にしていいよ」と発言

●あなた:「許可された」と安心して交際開始

◯配偶者A:水面下で探偵に依頼、証拠収集を進行

▲証拠が揃った瞬間:弁護士経由で慰謝料請求書が到着

このパターンでは、配偶者側が最初から離婚を有利に進めるシナリオを描いていることが多く、

  • ホテル出入りの写真や動画
  • 行動パターンの記録(数日〜数週間)
  • GPSデータや交通履歴
  • 不倫相手の身元特定の資料

これらが完璧に揃えられた状態で、突然請求が届くのです。

結論「離婚協議中であっても――」

✅ 重要なこと❌ 通用しないこと
婚姻関係が実質的に破綻している証拠口頭の「許可」
離婚成立後に交際を開始する慎重さ「斡旋された」という言い訳
客観的事実に基づく判断「許されたと思った」という主観

最も重要なのは、

それを証明できる証拠があるかどうか、ということです。


こんな時はご相談ください。
離婚前の「その一歩」を踏み出す前に、必ずプロにご相談ください。 動いてしまえば取り返しがつかなくなるかもしれません。